予防接種
赤ちゃんは生まれた時、母体から、病気に抵抗できる「免疫」が与えられます。ただし、この免疫は生後数か月を経過すると、効果が切れてしまいます。これらの免疫が切れた後は、赤ちゃん自身で免疫を獲得し、感染を予防する必要があります。その時に、予防接種の出番となります。本来は実際に感染症にかかり、その感染症に対する免疫を獲得していきますが、予防接種を受けることで赤ちゃんが感染症にかかることなく、自身で免疫を得られるようになります。 子どもは成長するにつれて、外に出たり集団生活したりする機会が多くなります。それに伴って、感染症にかかるリスクも増えていきます。予防接種を事前に受けておくことで、感染・重症化する可能性のある疾患にかかりにくくなります。また発症した場合でも、重症化を防ぐことができます。お子様の健康を守るためにも、ぜひ予防接種の知識を身に付けていきましょう。
予防接種を受ける時に
必要な物
- 健康保険証
- 母子健康手帳
- (定期接種を受ける場合)予防接種予診票兼接種票
予防接種を受けられない方
- 熱が37.5℃以上ある
- (定期接種を受ける場合)予防接種予診票兼接種票の確認ができない
- 医師から「接種できない」と判断された
定期予防接種について
予防接種法に載っている定期予防接種は、ワクチンで発症を抑えられる感染症の発症または蔓延を防ぐ上で、重要なものです。ワクチンはそれぞれに接種年齢が定められているため、それに合わせるようスケジュールを調整しながら、接種を完了させる必要があります。急な予定変更などがあってもしっかり接種できるよう、かかりつけ医と相談しながら、余裕を持ったスケジュールを立てておくことをお勧めします。
同時接種について
同時接種は、2種類以上の異なるワクチンを同じ日に、かつ同じ病院内で接種することです。医師が必要だと判断した時に受けられる方法ですので、事前にかかりつけ医や小児科へ相談してから受けるようにしてください。
同時接種を行っておくと、より早い時期からワクチンによる免疫を得られやすくなります。実際に同時接種は、日本小児科学会から推奨されている方法でもあります。単独接種と比較して、副反応が強く出たり、ワクチンの効果が低くなることはありませんので安心して接種を受けてください。
任意予防接種について
任意予防接種とは、定期接種とされていない予防接種のことです。おたふくかぜやインフルエンザなどの予防接種は任意接種になります。
予防接種の一覧
ヒブ
(インフルエンザ菌b型)
髄膜炎、肺炎、骨髄炎などの侵襲性感染症を引き起こします。ヒブによる髄膜炎は、後遺症のリスクが高いだけでなく、最悪の場合死に至ることもあります。生後2か月を過ぎたら、B型肝炎とロタウイルス、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンとの同時接種を受けることをお勧めします。
肺炎球菌
中耳炎や肺炎、細菌性髄膜炎、敗血症など命を落とす恐れのある疾患の原因となる感染症です。多剤耐性肺炎球菌が問題となっており、治療に難渋することもあるので生後2か月を過ぎたら早めに接種しましょう。
B型肝炎
日本国内でのB型肝炎ウイルスの感染者数は約100万人と言われています。一過性感染あるいは持続感染を起こします。持続感染の多くは出生時、または乳幼児期の感染で成立します。慢性肝炎を引き起こすと将来、肝硬変や肝臓がんを発症することがあります。
流行性耳下腺炎
(ムンプス)
耳下腺が腫れる様子から「おたふくかぜ」とも呼ばれています。無菌性髄膜炎や難聴、脳炎、精巣炎など重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。そして残念ながら、おたふくかぜによる難聴を完治させる治療法は確立されていません。1歳を迎えましたら速やかに、1回目の接種を受けるようにしましょう。
水疱(水ぼうそう)
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することで発症する疾患です。発疹をかいてしまうことで細菌感染を合併したり、肺炎、脳炎などを引き起こす恐れがあるため、1歳を迎えましたら速やかに接種を受けてください。1回の接種で水痘にかかるリスクを約80%へらし、2回の接種で95%程度減らすことができるため忘れずに受けてください。
4種混合
ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオの予防に有効なワクチンです。この4種類の感染症は発症すると、重篤な後遺症を残したり命を落とす危険性があると指摘されています。特に百日咳は乳幼児がかかりやすく、重症化しやすいとされています。接種できる生後2か月になりましたら、速やかに4種混合ワクチンを受けるようにしましょう。
BCG
結核予防に有効なワクチンです。結核は現在でも1年間に約20000人もの新規発症者と、約2000人もの死亡者を出している疾患です。特に乳幼児期に発症すると、結核性髄膜炎や粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)など重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。生後5か月を過ぎたら、予防接種を受けましょう。
麻疹風疹
麻疹は一般的に「はしか」と言われている、感染力が高い疾患です。
風疹は成人になってから発症すると、重症化しやすいとされています。また、妊娠中に感染すると胎児が先天性風疹症候群を引き起こし、心臓や目、耳などに障害を持って生まれてしまう恐れがあります。妊娠初期に感染するほど障害がおこる可能性が高まるとされています。1歳になったら速やかに、1期の接種を受けましょう。
子宮頚がん
子宮頸がんは、1年間で10000~15000人もの発症者がおり、約3000人が命を落としているとされている疾患です。子宮頚がんワクチンは、子宮頸がんの予防に有効なワクチンです。接種が広く普及している国では、HPV感染や前がん病変の発生の低下に成功していると報告されています。当院では、有効性の高さから子宮頚がんのワクチン接種を勧めています。接種前には、メリットとリスクについて丁寧に説明していきますので、分からないことがありましたらお気軽にご質問ください。
費用
定期予防接種は無料です。ただし、対象年齢の前または過ぎてから接種を受ける場合や、事前の申請なしにお住まいの市区町村の指定医療機関ではない病院で受けた場合などは、任意接種の扱いとなります。その場合は自費になります。
※注意
予診票の記載内容に間違いや記入漏れがあると、定期予防接種として受けることが難しくなる可能性があります。そうなった場合は定期接種ではなく、任意接種となって支払が発生してしまいます。
よくある質問
予防接種後の副反応ですが、どういった症状が起こりますか?
副反応とは、接種後に生じる反応です。免疫を高める働き以外のものを指します。注射を打った患部の赤みや腫れなどのような軽いものから、アナフィラキシーショックのような重度のものまで、非常に多岐にわたります。患部の痛みやしこり、発熱などが起こるケースもありますが、これらの副反応のほとんどは、数日のうちに解消されます。一般的に普及している定期接種や任意接種で、重い副反応を起こすケースは低いと言われています。
予防接種を受けた後、患部が大きく腫れました。受診した方が良いのでしょうか?
腫れは数日程度でひくことが多いので、ご安心ください。
接種を受けた後に熱が出ました。受診した方が良いのでしょうか?
元気そうにしていて水分摂取もできている状態でしたら、いったん様子を見てください。もし、ぐったりしていたり呼吸が荒くなったり、けいれんを起こしたりした場合は、迷わず救急外来を受診してください。予防接種と風邪などによる発熱が同時に重なった可能性も考えられますので、きちんと症状をチェックしてから医療機関へ相談してください。
副反応の発熱は接種してから、何時間後に起こりますか?
生ワクチンの場合は、2週間以内に発熱が起こります。不活化ワクチンの場合は接種してから24時間以内に発熱が起こり、48時間のうちに熱が下がることが多いです。
同時接種のリスクについて教えてください。
同時接種でも単独接種でも、副反応や接種効果の大きさはほとんど変わらないと言われています。むしろ同時接種の方がスケジュールの調整が簡単に行いやすく、かつ必要な免疫を早く得られるというメリットがあります。実際に日本小児科学会でも、同時接種が勧められています。
予防接種を受けた日に、お風呂に入っても大丈夫でしょうか?
接種してから1時間以上経っていましたら、お風呂に入っても問題ありません。ただし、接種部位を擦ったり揉んだり、押したりしないでください。
卵アレルギーを持っていますが、インフルエンザワクチンの接種は受けられますか?
インフルエンザワクチンにはごくわずかな量の卵成分しか入っていません。そのわずかな卵にも反応する重度の卵アレルギーではなく、軽度の卵アレルギーでしたら、問題なく接種が受けられます。ただし、接種前には医師に、卵の摂取によってどういった症状が現れたのかをきちんと伝える必要があります。
BCGを受けてから数日後に、接種部位が赤く腫れてしまいました。受診した方が良いでしょうか?
通常、BCGの接種部位の赤みは、接種してから1~2日以内に消失します。そこから10日~2週間後に、赤みや腫れが再び現れます。接種後7日以内に化膿した場合は、結核の感染が疑われます。その場合は速やかに受診しましょう。
BCG接種後に、脇の下が腫れてしこりができました。受診した方が良いでしょうか?
BCGの接種を受けた後、脇の下にしこりができる確率は1%とされています。2cm以下でしたら1年程かけて自然と縮小していきます。ただし、2cm以上ある場合や、他に心配な点がある場合は当院へ受診してください。