子どもの便秘について
ここでは便秘症と慢性便秘症についてまとめています。
便秘症
長期間便が排出されない、または便が出ていても痛みや出血を伴っており、正常な排便が難しい状態です。毎日排便ができていても、量が少ないことで便秘になるケースも多くあります。食べる量や排便量、排便の頻度は一人ひとり違うため、「長期間」という期間にはっきりとした定義はありません。ただし、排便回数が1週間に3回未満だった場合は便秘症の可能性が高いです。
慢性便秘症
便秘症の状態が1か月以上続いている状態です。当院では、超音波検査で便秘がどうかをチェックできます。超音波検査は痛みを伴わず、被ばくの心配もないため最も安全な検査方法です。
続く便秘をそのまま
放置しないでください
小学校低学年頃までの年代は排便に必要な機能が発達しきれていません。またこの時期は、正しい排便習慣を身につける段階の途中にいる年頃です。この時期に便秘を放っておくと、排便機能や習慣が適切に発達しにくくなりますし、将来も便秘に悩まされやすくなります。少しでも心当たりがありましたら、速やかに受診してください。
子どもの便秘の
チェックリスト
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トイレに行こうとしない
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排便する時に痛がる、泣く
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常に腹部が張っている
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排便回数が1週間に3回未満
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元気がない
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食欲不振
上記のような症状・様子に心当たりがありましたら、一度、当院へお越しください。
子どもの下痢について
下痢は、冷えやアレルギー、ストレス、過労、冷たい物の食べすぎ・飲みすぎ、暴飲暴食などによって起こります。細菌やウイルスに感染した際も、病原体を早く追い出そうとするために、下痢が起こります。また腹痛を伴った下痢便が出ることもありますが、これは排便を促すために、腸が収縮することで起こります。
子どもの下痢の
チェックポイント
下記項目にまとめられている症状は、受診が必要なサインになります。1つでも当てはまるものがありましたら、速やかに受診してください。
- 下痢が治らない
- 嘔吐もみられる
- ぐったりしている
- 発熱がある
- 口内が乾燥している
- 水分補給が十分にできていない
- 排尿の回数が少ない
- 尿の色が濃い
- 便の臭いがいつもと違う
- 血便が出ている
- 便が白っぽい
- 目にくぼみができている
など
受診された際に、症状の内容や排便状況、便の形状、機嫌や様子の変化、体温、血便の有無などをスムーズに伝えられるよう、きちんと症状を把握して記録しましょう。
子どもの便秘・下痢で
よくある質問
便秘になりやすいタイミングなどはありますか?
以下の時期は、子どもが便秘になりやすいタイミングでもあります。この時期になりましたら、お子様の排便状態をきちんと見守りましょう。そして問題を見つけた際は、速やかにご相談ください。
- トイレトレーニングを始めた2〜4歳頃
- 母乳からミルクに移行した時
- 離乳食デビューした時
- 入園または入学をきっかけに、集団生活を始めた時期
など
理想的な便の形について教えてください。
バナナぐらいの硬さと形が理想形です。バナナより硬くても、若干ひび割れている程度でしたら心配いりません。また、歯みがきをする時ぐらいの力を入れても、形を維持できる柔らかさでしたら半固形状態でも問題ありません。
便秘は病院で治療した方が良いのでしょうか?
適切な治療を受けてスッキリ排便できるようになると、QOL(生活の質)も向上されやすくなります。便秘があると腹痛や排便時の痛み、不快感なども起こりますし、肛門や腸への負担も大きくなります。
受診が必要な便秘について教えてください。
子どもが排便を嫌がるそぶりを見せていましたら、ぜひ受診してください。また、以下のサインが見られた際は。便秘および他の疾患を発症している可能性があります。下記以外の症状で気になるものがありましたら、その際もぜひ、お気軽にご相談ください。
- 排便が週に3回未満
- 硬い便が少し出ている
- いきんでいるのに排便できない
- 排便できるまで時間がかかる
- 排便時に痛がるそぶりを見せる
- 肛門の周りや下着に便が付着している
- 便に血がついている
- 自力で便を出すことができない
便秘が治るまで、どれくらいかかりますか?
症状や体質、生活習慣は一人ひとり大きく異なるため、治るまでに要する期間も変わっていきます。ただし今までの治療経験から踏まえると、便秘で受診された約50%の方には、長期の治療期間が必要だったと感じています。便秘以外の症状を伴わない場合は1か月程度で良くなりますが、治療を止めると再発しやすい傾向もあります。症状を良くしながらその状態を維持できるようにするため、2年以上の治療プランを立てることも有効です。
下痢ではありませんが、いつもと違う便が出ていました。受診した方が良いのでしょうか?
便の状態について説明するのは難しいかと思われます。少しでも気になる便が見られた際は流さずに、おむつなどを袋に入れて受診することをお勧めします。また、写真からでも、大まかに診ることができます。
下痢がなかなか治りません。受診する時、便を持って行った方が良いでしょうか?
便を持っていただくと、その便を使った検査が受けられます。そのため当院では、便を持っての受診を勧めています、ただし、何度も排便している場合は、一番新しい便を持っていただけますと幸いです。
便の持ち運び方について教えてください。
トイレで出した場合はスプーンなどで採取し、清潔なタッパーやジップロックなどの密閉容器にしまってお持ちください。
便の写真からでも診断できますか?
もちろん、写真でもある程度は参考になります。臭いや色などの細かい情報を診たり、便検査を行ったりすることはできません。より正確に診察するために、便を持って受診されることをお勧めします。
便を流してしまいました。その場合、便検査を受けることはできませんか?
肛門に綿棒を入れて、綿棒に便を付けたままお持ちいただく方法もございます。ただし、ある程度の量が付着していないと、正確な検査が難しくなる可能性もあります。予めご了承ください。
便検査ではどういったことが分かりますか?
ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスの迅速検査キットによる検査が受けられます。肛門に入れた綿棒を使うことで、たったの10分程度で結果が確認できる検査です。
また当院では、便中の菌の検査だけでなく、血液検査や超音波検査なども受けられます。正確な結果を得るにはある程度の量の便が必要になるため、できる限り採った便を持って受診してください。
症状などによっては、浣腸を行って便を観察することもあります。また、顔色が悪いと判断した際は、診察前に血糖を測ることもあります。なお、当院では吐いた物の検査に対応していませんので、嘔吐物は持ち込まないでください。
応急処置は行っていますか?
脱水症状がみられる、下痢だけでなく嘔吐も伴っている場合、低血糖状態に陥っている場合は、点滴処置を行います。必要だと判断した際には、血液検査も行います。
便秘による腹痛がみられる、胃腸炎で腸が十分に機能していない場合は、浣腸を行います。重度の便秘がみられる場合は、浣腸後に飲み薬を飲んでいただくこともあります。
坐薬を入れてもらうことは可能でしょうか?
院内での坐薬挿入を希望される際は、お気軽にお申し出ください。実際に、座薬によって症状がすぐに良くなることもあります。
薬を院内で処方することは可能でしょうか?
当院では、院外処方で薬をお出ししています。当院の近隣にも複数の調剤薬局がありますが、ご自宅の近隣などにかかりつけの調剤薬局がありましたら、そこで受け取っても構いません。
保育園(幼稚園)に通っているため、薬を朝・昼・晩ではなく朝・晩の2回服用にしたいです。
可能です。また、シロップや粉薬、錠剤、坐薬などの中から飲みやすいものをお選びいただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。院外処方で多種多様の種類の薬を用意し、一人ひとりに合った処方を心がけています。薬によっては服用方法などを変更できる場合もありますので、診察時にご相談ください。
子どもの便秘は珍しいのでしょうか?
子どもの約10%には便秘が起こると言われているため、そこまで珍しいものではありません。また、小学生の便秘の発症率は20%とも言われています。
便秘は「症状」ではなく「ただの体調不良」と軽視されやすい傾向にあります。そのため子どもに便秘がみられても、受診させようか悩まれる保護者の方も多くいます。しかし、便秘は悪化・再発しやすく、悪化させると治りも遅くなります。早期のうちに治療を受けていけば、スムーズに改善されやすくなります。子どもの排便で不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
便秘治療ではどういったことが行われますか?
排便の回数や便の形状、硬さを記録したお通じ日記をつけていただきます。記録によって排便状況を正確に確認した上で、食事などの生活習慣を改善させます。必要に応じて、便を柔らかくする薬や腸の働きを促す薬、浣腸、坐薬などを処方することもあります。トイレトレーニングを行っている場合は、トレーニング内容を振り返って精神的なプレッシャーを軽減させることも重要です。また、適切な排便習慣をつけるためのトレーニングなどにも対応しています。
食事や生活習慣を見直したいのですが、気を付けた方が良いことはありますか?
まずは、栄養バランスの整った食事を心がけましょう。特に、食物繊維が豊富な食品は積極的に摂取してください。運動不足・水分不足の場合は、適度な運動を習慣化させたり水分をこまめに摂ったりする必要があります。運動や水分量に問題がない場合は、無理に増やさなくても大丈夫です。また、「身体に良いから」とお子様の嫌いなものを無理やり食べさせるとストレスが溜まりやすくなるため、無理やり食べさせるのは避けてあげましょう。
そして、便意がある時はトイレに行く、早起きしてゆっくりトイレに行ける時間を設けるといった生活習慣の改善も有効です。まずは取り入れやすい方法から始め、少しずつ改善していきましょう。
子どもの嘔吐について
子どもが嘔吐したとき
の対応
大人は咳き込みやすい状況を自身で回避したり、嘔吐しそうになっても適切に対処(トイレへ行く、袋の中で吐くなど)したりすることができます。しかし小さい子どもの場合は、咳の出やすい環境を自力で回避するのは難しいため、親御さんがサポートする必要があります。
嘔吐してもぐったりしていない場合は、まずいったん様子を見ましょう。嘔してから30分~1時間後に吐き気が治まっている場合は、経口補水液を少量ずつ飲ませてみましょう。また、感染性胃腸炎で嘔吐した時に備えて、普段から感染拡大を防ぐための処理方法を把握しておくことをお勧めします。
嘔吐物の処理について
ノロウイルスやロタウイルスは感染力が非常に高く、乾燥した場所でも10日程生き延びるという特徴があります。石鹸や消毒用アルコールでも効果が得られにくいため、塩素系漂白剤(ハイターやブリーチなど、次亜塩素酸ナトリウムと記載されている製品)や哺乳瓶用の消毒液などを使って、消毒・死滅させなくてはなりません。また、便や吐いた物の中にも、大量のウイルスが含まれています。そのためできる限り、使い捨て手袋やマスクを身に付けてから、それらを処分してください。
嘔吐物などがついた服は、100倍に薄めた塩素系漂白剤に5~10分程浸けてください。ただし漂白剤ですので、色落ちの心配もあるかと思われます。色落ちが心配な服は85℃以上の熱湯に2分以上浸けるという方法で消毒してください。また、嘔吐物などで汚れた服は、そうでない服と別にして洗濯してください。消毒した服につきましては、普段通りの方法で洗っても問題ありません。
汚物の処理方法
- 便や嘔吐物を片付ける際は、使い捨てタイプの手袋とマスクを着けてから行いましょう。
- ペーパータオルなどで便や嘔吐物を拭きとり、ビニール袋に入れて処分してください。
- 残った便や嘔吐物の上にペーパータオルをかぶせてください。その上から、50~100倍に薄めた塩素系漂白剤を浸るまでかけてください、汚染された範囲を広げないよう、ペーパータオルで丁寧に拭きとりましょう。
- ウイルスは乾燥すると空気中に漂う性質を持っています。空気中に浮いたウイルスが口に入ると、感染するリスクが高くなるため、便や嘔吐物の乾燥を防ぐ必要があります。そのため嘔吐物やおむつは、速やかに処分してください。